前回に引き続き、金融庁から公表された「金融仲介機能のベンチマーク」について紹介しよう。全国の金融機関が対象となっており、皆さまのメイン行の重役も対応に追われていることだろう。当然のことながら、旅館・ホテルに対する取引方針にも影響するので理解しておくことをおすすめする。
指標(ベンチマーク)は、共通項目と選択項目がある。共通項目は五つあり、全ての金融機関共通の指標となるので大変重要なものである。
具体的には、(1)「金融機関がメインバンクとして取引を行っている企業のうち、経営指標(売り上げ・営業利益率・労働生産性など)の改善や就業者数の増加が見られた融資先数、および、同先に対する融資額の推移」(2)「金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況」(3)「金融機関が関与した創業、第二創業の件数」(4)「ライフステージ別の与信先数、および、融資額」(5)「金融機関が事業性評価に基づく融資を行っている与信先数および融資額、および、全与信先数および融資額に占める割合」―となっている。
(1)は、旅館・ホテルに対する評価として、昨年度と比べた売り上げや営業利益率、就業者数がポイントとなるということである。これまでは売り上げの増減に関係なく「人件費の増加=悪」という考え方であったが、業績改善につながるのであれば人員数が増加しても構わないという考え方に変化していくだろう。
(2)は、経営改善計画のチェックがより厳しくなっていくということである。2年以上の長期にわたり元本の約定弁済ができていない場合には、売却や廃業を迫られる可能性があるので、早期の正常化を目指したい。
(3)は、既存の不採算部門をやめて新規事業に取り組む旅館・ホテルに対して金融機関のサポートが充実する可能性があるということである。
(4)は、創業期、成長期、成熟期、再生期の各段階を見極めて融資判断を行うということである。自社がどの段階にあると見られているか客観的に判断しながら、金融機関との付き合い方を考えたほうが良いだろう。
(5)は、前回コラムで紹介したとおりであるが、事業性を積極的に分析・評価し、無担保・無保証の貸出を増やしていくということである。
(山田ビジネスコンサルティング事業企画部部長)